癒しで見えてきた新しい自分に戸惑う時:過去の自分と現在の自分を統合する
癒しが進むにつれて感じる変化への戸惑い
インナーチャイルドの癒しや、過去のトラウマとの向き合いに数年取り組んでこられた読者の皆様の中には、少しずつご自身の内に変化を感じていらっしゃる方も少なくないかもしれません。以前よりも感情を感じられるようになった、自分の気持ちを伝えられるようになった、人との関係性が少し楽になった、といった具体的な変化を体験されていることと思います。
一方で、こうしたポジティブな変化を感じる中で、「なんだか自分じゃないみたいだ」「以前の自分のほうが楽だったかもしれない」「この変化は本当に大丈夫だろうか」といった戸惑いや、時には不安を感じることはありませんでしょうか。長年慣れ親しんできた自己イメージや心のあり方から離れることは、たとえそれが生きづらさに繋がっていたものであったとしても、ある種の不安定さや心許なさを伴う場合があります。これは、コンフォートゾーン(慣れ親しんだ、居心地の良い領域)からの変化であり、自然な心の反応と言えるでしょう。
回復の過程は、過去の傷を癒すだけでなく、新しい自己を再構築していくプロセスでもあります。その中で、過去の傷ついた自分と、現在の癒されつつある自分との間にギャップを感じ、自分自身のアイデンティティ(自己同一性)が揺らぐように感じられることがあるのです。
過去の自分を否定せず、現在の自分を受け入れる
このような戸惑いを乗り越え、回復をさらに深めていくためには、「過去の自分」と「現在の自分」を分断するのではなく、ひと続きの自分自身として受け入れ、統合していく視点が大切になります。
過去の傷つきやすかった自分、自己否定に苦しんでいた自分は、その時その時を生き抜くために必要な姿だったかもしれません。その時の自分を否定することは、これまでのご自身の歩みそのものを否定することにつながりかねません。現在の自分が感じている変化や成長は、まさにその過去の自分と向き合い、乗り越えようと努力を重ねてきた証です。
自己統合とは、過去の傷ついた自分、未熟だった自分、失敗した自分、そして現在の変化しつつある自分、未来のありたい自分、これら全てを「自分自身」として受け入れ、一つのまとまりとして感じられるようになるプロセスです。これは、決して「過去は完全に癒されて終わり」という線引きをするものではなく、過去の経験が現在の自分を形作っていることを認め、その上で未来へと繋がっていくような感覚です。
自己統合に向けた実践的なヒント
では、具体的にどのように過去の自分と現在の自分を統合し、新しい自分を受け入れていくことができるでしょうか。いくつかヒントをご紹介します。
- 変化に気づき、言葉にする: 日々の生活の中で、「ああ、以前ならこう感じなかったな」「こんな行動はしなかったな」と、ご自身の内面や行動の変化に意識的に気づく練習をしてみてください。そして、その変化を言葉にしてみましょう。ジャーナリング(書くこと)は、変化を客観的に捉え、受け入れる助けになります。
- 過去の自分への「ねぎらい」や「感謝」: 過去の、特に辛い時期の自分自身に対して、心の中で「よく耐えたね」「あの状況で精一杯だったね」といったねぎらいの言葉をかけてみてください。今の自分がここにいるのは、過去の自分が懸命に生きてくれたおかげである、という視点を持つことで、過去の自分への見方が変わるかもしれません。
- 現在の「好き」や「心地よさ」を大切にする: 変化したことで感じる新しい感覚や、以前は避けていたけれど今は心地よいと感じるものに、意識を向けてみましょう。それは、新しい自分自身が求めているものかもしれません。小さな「好き」や「心地よさ」を積み重ねることで、新しい自己イメージへの信頼が育まれていきます。
- 信頼できる他者との関係性: 安全だと感じられる友人やパートナー、支援者との関係性の中で、変化しつつある自分を表現してみることも有効です。他者からの肯定的な反応は、新しい自分を受け入れる勇気を与えてくれます。ただし、変化を強要したり、否定したりする関係性からは距離を置くことが大切です。
全てが自分を形作る一部として
回復の旅は、自分自身の存在全てを受け入れる旅とも言えます。過去の痛みも、そこから生まれた強さも、現在の戸惑いも、そして未来への希望も、全てがかけがえのない「自分自身」を形作る一部です。
もし今、新しい自分に戸惑いを感じているとしても、それはあなたが回復の道を着実に歩んでいる証でもあります。その感覚を否定したり、無理に押し込めたりせず、「ああ、自分は今、変化の中にいるんだな」と静かに見守ってあげてください。過去の自分を否定せず、現在の自分を受け入れていくその道のりは、必ずやあなたをより深く、より豊かな自己受容へと導いてくれることでしょう。
このサイトが、あなたが変化の波の中で、ご自身への優しさを忘れず、過去と現在の自分を統合していくための心の拠り所となることを願っています。